【考察】なぜボディボード世界ツアー(IBC)から「ハワイ」が消えたのか?
【考察】なぜボディボード世界ツアー(IBC)から「ハワイ」が消えたのか?
かつて、ボディボードのチャンピオンを決めるといえばハワイ・オアフ島の「パイプライン」が絶対的な舞台でした。マイク・スチュワートやギレルメ・タメガといった伝説たちがその荒波で歴史を作ってきました。
しかし、現在の世界ツアー(IBC)のカレンダーを見ると、ハワイの文字はありません。かつての「聖地」がなぜカレンダーから外れてしまったのか。その視点で理由を紐解きます。
1. 運営組織の交代と「南米シフト」
ボディボードの世界ツアーは、2019年までの「APB」から、2020年に新組織「IBC(International Bodyboarding Corporation)」へと引き継がれました。
このIBCは**チリやブラジルといった南米、そしてスペイン(カナリア諸島)**のオーガナイザーが主導しています。彼らは地元の自治体や企業から強力なスポンサーシップを取り付けることに成功しており、結果としてツアーの拠点がハワイから、賞金や運営費が確保しやすい南米・欧州へとシフトしたのが最大の理由です。
2. 「世界一高い」開催コストと許可証の壁
ハワイ、特に冬のノースショアで試合を開催するには、天文学的なコストと手間がかかります。
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許可証(パーミット)の争奪戦: パイプラインで試合ができる日数は、ホノルル市当局によって厳しく制限されています。サーフィンのWSL(World Surf League)といった巨大組織と枠を争うのは、資金力の限られたボディボード界には極めて高いハードルです。
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高額な運営費: 警備、ライブ配信設備、スタッフの滞在費。物価高騰も相まって、ハワイでの開催は他国の数倍の予算が必要になります。
3. 「映像」を売るビジネスモデルへの転換
現在のIBCは、YouTube等での高品質なライブストリーミングを通じて世界中にファンを広げる戦略をとっています。
ハワイ(特にパイプライン)で試合を行う場合、WSLが独占的な放映権や優先権を持っているケースが多く、IBCが自分たちの思うような形で世界配信を行うには制約が多すぎます。それならば、自分たちが主導権を握れ、かつ波のクオリティも引けを取らないチリのアリカや、カナリア諸島のフロントンを「メインステージ」に据える方が、ビジネスとして合理的だと判断されたのです。
現在のハワイはどうなっている?
「IBCの試合」としてはなくなりましたが、ハワイ独自のイベント(例:Hawaii Pipeline Bodyboarding Championships)は、IBCの公式ツアー枠外や下部カテゴリーとして今も開催されています。
世界中のトップライダーは今でもハワイに集まります。しかし、それは「ポイントを稼ぐため」ではなく、純粋に「世界一の波に乗り、ライダーとしての証明を刻むため」という、より精神的な場へと変化していると言えるでしょう。
ではまた!

